北の湖から 〜大自然〜 ’00





♪ あ〜あ〜〜あああああ〜〜あ ♪  ああ〜あああああ〜♪


拝啓  恵子ちゃん

お見送りありがとうございました。僕は、今日、ナムツォに着きました。
ほんとは、ナイショにしたかったんだけど、
僕は、チベットの仏教に、がっかりしてしまい・・・

なので、M君に連れられてこんな遠くまで、来てしまったわけで・・・。



・・・・恵子ちゃんがこの前、言った様に、ナムツォはロマンチックな所です。
少し、風が吹いて来たので、テントの中で休んでて、
外に出ると、
遠くに見える山々の頭が、雪をかぶっていてびっくりしちゃったんだ。









「電気が無い〜!?電気がなきゃ暮らせませんよ〜ぉ!」

「そんなことありませんよ〜ぉ。」

「夜になったらどうするんですぅ?」

「夜になったら寝るんです。」

「シャワーが無い〜!?シャワーがなきゃ不潔ですよ〜ぉ?」

「シャワーが無きゃ、一日我慢するんです。」

「トイレが無い〜!?トイレがなきゃ、う○ち出来ませんよ〜ぉ。」

「トイレが無きゃ、野グさんするんです。」

「あちゃ〜。」


恵子ちゃん サギだ!ぜんぜん、サギです!!
ナムツォがロマンチックな所だなんて・・・。
そりゃ〜、確かに頂きに雪をかぶった、山々は、綺麗だけど・・・。
ここには、トイレも、何にもないわけで・・・。



・・・そんな中で、この人たち(遊牧民)がどうやって生活しているのかと言うと、

ヤクと呼ばれる牛のような動物を飼ってるんだ。
さすがに、そのヤクっていうのは、とっても便利な家畜なわけで。

ツノは、装飾品に加工できて、毛は、衣服に利用して、
お乳は、もちろん飲めて、お肉も、食べれて・・・、
その中でも、一番びっくりなのが、
草食動物のフンだから、乾燥させると、ストーブの燃料になるんだ・・・。







<ナムツォに厳しい夜が訪れた>


 恵子ちゃん どうか助けて下さい! 

ナムツォの星空はとっても、綺麗なんだけど、
外は、最悪の寒さであり、

さらには・・・

この辺りは・・

夜な夜な凶暴な野犬が出没とするいう物騒なところで・・・、

思うに、今晩は、テントの外から、一歩も出られないと思われ・・・。


でも、テントって言っても、とっても頑丈なんだ。
とても大きくて、
ベット6つと、テーブルと、ストーブが入っちゃうくらいの大きさです。
外は、寒いから一晩中、ストーブを炊いてくれて・・・

すきま風も入らないように、
生地は、とっても分厚く、地面びっちりに敷き詰めてあり・・・、

凶暴な野犬に襲われないように、
テントの入り口を、ロープで絶対に外せない程、
きつく、グルグル巻きにして留めてくれてるので、

僕らは、安心して眠りにつく事が出来た・・・。








丑三つ時、僕は目が覚めた。

そりゃぁ・・・

宿の人たちが、ちゃんと僕らの安全に配慮してくれる気持ちは、
ありがたいんだけど・・・。

うまくいえないんだけど・・・

やっぱり・・・

右のベットを見ると・・

へんちゃんも起きていたわけで・・・。


だって・・・

あのストーブは、ヤクのフンを乾燥させたものだから、

ほとんど・・・

部屋の中で、草を燃やしている状態と、おんなじなわけで・・・、


そのうえ・・・、

テントには排気口が、一つも見当たらず・・・

その煙がモクモクとテント中に充満しているので・・・

やっぱり・・・、

僕の喉は・・・

猛烈な痛みを感じ始め・・・


さらに、最悪な事に・・・


4718mの標高なので、
酸素がうんと薄いのにも関わらず・・・、

隙間ゼロの中、
延々と何時間もの間、
ストーブを、焚きつづけているので・・・、


やっぱり・・・

僕らは・・・

一酸化炭素中毒の・・・

一歩手前に・・・

立っており・・・。


高山病に限っては・・・

スタートライン上で

クラウチングスタートを・・・

しているわけで・・・



・・・なので・・



僕は・・・

極度の頭痛に・・・

モガキ苦しんでおり・・・


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・

・・









恵子ちゃんっ この人達は、僕らを殺す気ですっ!!








僕は、真剣に逃げ出す計画を練っていた。

「あ、開かない、どうしても、ダメだ。」

入り口のロープは、僕の手に負えない程、硬く結ばれており、
テントの中は真っ暗で、その結び目も良く見えず・・・。

だから、僕は、力いっぱい入り口を持ち上げ、
地面に這いつくばりながら外へ出たんだ。

無我夢中だった・・。

ほんとは、ちゃんとロープをほどいた方が良かったんだろうけど、
考える余裕もなかった。

ただ、一秒でも早く外へ出たかったんだ・・・。



外の空気は、とっても美味しかった。よく、ヤクザ映画で、

「アニキ、おかんなさい!」

「やっぱ、シャバの空気は、うめーなー。」

なんて、言ってて、
それを感じた僕も、ちょっぴり開放感にひたれたわけで・・・。


実は、僕は、トイレットペーパーを持って出て来ていた。


僕は、ほんとうに気の小さい人間と思われ・・・

白昼堂々と野グさんをする勇気も無く・・・

このみんなが寝静まった丑三つ時に、
こっそりすませてしまおうとも思っていたわけで・・・。

僕は、使われていない廃屋の裏に行って、ズポンをすりおろしたんだけど、
あまりの寒さに、身が震えた・・・。






あっ・・・!!??








・・・拝啓、恵子ちゃん・・・。

・・・・やっぱり・・・

僕は・・・

明らかにツイていない部類の人間に入ると思われ・・・。


「ザザッ!ザザッ!ザザッ!ザザッ!ザザッ!」

・・・遠くからこっちへ、近づいてくる、多くの足音が聞こえるわけで・・・。

「ワオ〜ン、ワオ〜ン!」

・・・・「銀牙」で、聞いた事ある、
野犬の群れの遠吠えが、高らかにこだましているわけで・・・。



僕の心臓は、止まりそうだった・・・。



その時の僕の心情を振り返ると、

やっぱり・・・

やっぱり僕は・・・

僕は、ほんとうにずるい人間で・・・。

たった今まで、信じていなかった仏様に・・

心底、祈ってしまっていたわけで・・・。


父さん・・どうか、僕を叱って下さい・・・。




メダパニ状態の脳みそは、この場所からの逃げ方よりも、
明日の日本の朝刊の見出しを考え出していたわけで・・・。


「標高4,800mのチベット奥地で、邦人男性おケツ丸出し遺体発見!!」






そうしている間にも、足おとは、左前方から確実に、近づいてきており・・・、

だから・・・

野犬の遠吠えは、

ドップラー効果で・・・

徐々に、高音になってきているわけで・・・。




・・・ぼ・・・

・・僕は、といえば・・

そのままズボンをはいて、逃げるべきなのか・・

・・・一回、おしりを拭いてから、はくべきなのか・・、

・・・・また、はいた後、どこへ逃げればいいのか・・・、


・・・かいもく、検討もつかないわけで・・・。



とりあえず、僕は、

おケツ丸出しウンチングスタイルのまま・・・

息をひそめることになったわけで・・・。






ワオーン!


ワオーン!


ワオーン!!



ワオーン!!ワオ〜ン!!



ワオーン!!ワオーン!!



ワオーン!!



ワオーン
!!



ワオーン!



ワオーン


ワオーン・


ワオーン・






拝啓、恵子ちゃんっ!!

僕は、自分でも信じられないくらいの幸ウンの持ち主ですっ!!

どうやら、野犬達は、左から右へ走り去っていってくれたらしく、
僕は、急いでおしりを拭き、テントに走ったわけで、

でも、やっぱり、入り口が開いてないので、
地面をはいながら入り、一命を取り留めた・・・



布団に潜り込んだ僕は、反省した・・・。






父さん・・・





一人で外に出てったのは、僕なので・・・、


責任は僕にあり・・・


だけどぉ・・・


・・・

だけどぉ

やっぱり


・・・


僕らの体質には・・・


この・・・


テントの中は・・・


合ってないと思われ・・・


・・・・・・・


やはり・・・


明日・・・


死人が出てしまうと思われ・・・







「ごふぉっ!ごふぉっ!」











ナムツォに朝が、もう、すぐそこまで来ていた・・・。






♪ らららら〜ぁ ♪ららららら〜らぁ ♪ らららららららららら〜ぁ♪







北の湖から〜 大自然 〜 ’00