闘痢記  〜病床からの奇跡のカムバック〜




バタバタと、トイレと部屋の往復を繰り返していました。

どうやらお腹を壊したっぽいのです。

ですが、そんじょそこらの下痢ではないっぽいのです。

なんてったって、トイレの回数が、
FM802のヘビーローテーション級で、尋常じゃないのです。


:これから
下痢の話です。ただ、下痢、下痢と連呼すると、お食事中の方もいらっしゃると思いますので、ここは、オブラートに包んでゲーリーという言い方をさせてもらいます。)

再注:ここに言うゲーリーとは、昔、中日にいて、変な打ち方をしてたゲーリー・レーシッチとは全く関係がありませんので、あしからずご了承下さい。)

このゲーリーたるや、日本のものとは、レベルが違います。

日本のゲーリーが、
テポドンクラスの破壊力だとすると、今回のゲーリーは
ノドンクラスの破壊力があると言っても過言ではありません。


では、そのテポドンとノドンの違いは何なのかという事ですが。

テポドンは、う○ちが、液体状で排泄されるのですが、今回のノドンは、気体状で、志村アースジェットの如く噴出されるのです。


そして、恐ろしい事に、このノドン。


いつ発射されるかわかりません。


脅威そのものです。


そもそもなぜ、こんな危機に瀕してしまったのか。


思い返せば、そうあの忌まわしい事件にさかのぼります。



あれは・・・そう・・・あまりにものどが渇いていたのです・・・。











ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ!! ぷは〜・・・。




ナガルコットから、カトマンズまで帰ってきた僕は、朝からパンどころか、水さえも口にしていませんでした。なので、3時頃、バスが到着するや、否や、売店に駆け込んで、ビンのコーラを買って、勢いよく飲んだのです。


「あれっ・・・。」


このコーラの味に
妙な違和感を感じ、握りしめているコーラのビンを見返しました。

すると、僕が、口を付けた所が、
思いっきりサビてて思いっきり真っ茶色になっているじゃありませんか。


うげぇー、どうりで、こんなにまずいはずやわ・・・。


実は、飲んでる最中も、ちょっぴり違和感を感じていたのですが、あまりにも喉が渇いていたので、飲むのを止められずに、一気に流し込んでしまったのです。

アジアでは、コーラや、ファンタ、またそれらのジュースは、250mlくらいのビンに入ってるのですが、保存状態が、悪かったり、保存期間がめっちゃ長かったりもするので、現地の人でさえ、直接口をつけて飲むことは、ほとんどありません。

中には、しっかりと、栓が閉まっているにも関わらず、コーラの量が多かったり、少なかったりもします・・・。

そんな全く信用出来ないビンコーラなので、いつもなら、売店で
ストローをもらって飲むのですが、今日は、朝から何も口にしていなかったので、焦っていた僕は、うっかりしてて、ビンの口に、魔の接吻をしてしまったのです。


ビンを見ると、一口で、
3分の2も飲んでしまっていました。

ただ、朝からの喉の渇きは、その200ml弱では癒せません。

手元に、残りの3分の1のコーラが残っています・・・。





・・・








・・・・・・・






飲んじゃえ♪





と、
こち亀の両さん並みに意地汚い僕は、喉の渇きの前には、理性が働かず、残りのコーラを飲み干してしまいました。

今度は、ちょっぴり気を使って口から放して、注ぎ込む様に飲んでみました。



その次の日、カトマンズからバスでここポカラという町までやってきました。



一人部屋の割と小奇麗な宿に決めて、荷物を置いて、町へ繰り出そうと思っていた矢先、急にお腹がゆるくなって、トイレに駆け込んだのです。









今まで、僕は結構お腹に自信があって、
テポドンクラスはあっても、こんなにもすごいノドンを経験した事がなかったので、少々取り乱してしまいましたが、そんなにまで動揺していませんでした。

実は、ノドンに対抗するべくとっても心強い秘密兵器をバックパックに搭載していたからです。

その正体は、
地対下痢誘導迎撃パトリオットミサイル、正露丸

いつも僕は、
お腹の有事の際には、この地対下痢誘導迎撃パトリオットミサイル 正露丸を体内に発射し、その瞬間に、ケロッと腹痛が治るという超ゲンキンな習性の持ち主です。


病は、気から


とは、よく言ったものです。だから、いつも腹痛に対して、そんなに恐怖心を抱いてなかったのです。

早速、かばんをゴソゴソとあさり、正露丸を取り出しました。常に周りに気を遣えるスマートな男なので、もちろん
糖衣A派です。

洗面所に行って、水道の水を両手に汲み、正露丸と共に飲み込みました。これで、もう一安心です。これ以上何も心配する事もないので、再び出かけようと思った



その刹那っ!



再び、トイレから、ものすごい引力が僕を引き寄せます。

正露丸が効いていないっ!

そんな予感と不安が僕の心の中を交差します。



ただ、まだ、パトリオットミサイルが患部に届いていないのかもしれない・・・。

出来れば、そう信じたい。




が、しかし、その希望もむなしく、その後時間が経っても、一向に腹痛は治る気配がありません。

で、またまた、トイレで志村アースジェットしたのですが、次、いつトイレからお呼びがかかるか判らない僕は、外へ出られる状態じゃなくなってしまい、
外出禁止の厳戒令が敷かれてしまいました。


そして、体力の消耗ももちろん激しいのですが、正露丸が効かないという衝撃の事実に、僕の自信は打ちひしがれ、かなりへばってしまいました。


正露丸は、僕が小学生の頃から、ずっと側にいてくれて、いつも、僕を助けてくれて、ずっと僕の心の支えだった。

なのに、何故・・・。

そんな時、ふと、高校の日本史の先生の言葉がよぎりました。

「なんで〜、正露丸って言うか知ってるかぁ〜?」

「・・・・・」(一同知らない)

「正露丸は、元々は、
征露丸って書くんや。露西亜(ロシア)を、征伐するっていう意味。

つまり、日露戦争の時に、沢山の日本兵が寒さで、腹を壊したからっていうので、その特効薬として発明されたんや。

それが、今では、征露っていうのもどうかっていうんで、ぎょうにんべんを取って、正露丸になったわけや。」




僕は、ベットの上で、うつ伏せになりながら、日本史の先生を回顧していました。


つまり、正露丸は寒さ系の腹痛には良く効くのですが、サビ等には、全く効かないっぽいという事です。


むしろ、サビには、
90ー5566(クレゴーゴーロク)なのか・・・。


もう心のよりどころの無くなった僕は、精も根も尽き果ててしまい、ベットに倒れこんでしまいました。



もう限界だ・・・。



起きてても何もすることもなく、トイレと部屋の往復のみ。

出来れば、もう眠りたい。

もしかしたら、寝ている時は、トイレに呼ばれないかもしれない。

目が覚めたら治ってるかもしれない。

そんな淡い期待に想いを馳せ、必至に寝ようとしているのですが、

執拗なトイレからの召集命令がやってきて・・・




・・・眠れもしない・・・。




ほとほと、困りました。この回数は、本当に尋常じゃありません。


そして、この部屋で、一人こもって、ゲーリーと戦っている心細さ。
しんどい時って、一人でいると必要以上に、マイナス思考に陥ってしまします。

小さい時、風を引いて布団で寝込んでいると、僕は、このまま死んじゃうんじゃないかと思って、独り、枕を濡らすことがよくありました。

今の僕はホントに一人ぼっちです。

正露丸が無効だと判った、今、どうしたらいいかも判りません。

このゲリーローテーションが、いつ終了するのかも判りません。

もしかしたら、
赤痢や肝炎等にかかってしまった可能性も大いにあります。

赤痢・・・、肝炎・・・・


ノドンどころの騒ぎじゃなく・・・・




これは、もはやです・・・。




いとも簡単に、この旅を破壊するパワーを・・・


いや、もしかすると、僕の人生まで灰にしてしまう破壊力を兼ね備えているかもしれません。


僕の不安は、どんどん膨らんできて、やがて、
不安が恐怖に変わってきます。

もし、赤痢・肝炎などにかかっているとしたら、今すぐに病院に行く必要があるのですが、
海外保険が使える病院がこの小さな町、ポカラにあるのでしょうか。


・・・きっと否です。


だとすれば、再び、首都カトマンズに戻なければならないのですが、
バスで4時間も掛かるのです。

4時間は、
パンパース、もしくはアテント無しでは、絶対に不可能な時間です。


結局は、ここで刻一刻と体がむしばまれていくのを、指をくわえて見ているしかないのです。



真っ暗闇に包まれた状況下・・・。


一体、僕はどこにいるのか・・・?


一体、どこが出口なのか・・・?


一体、どこに向かって進めば、いいのか・・・?


文字通り、
手探りの暗中模索・・・。



そんな恐怖のどん底で・・・・、


「もしかして、僕は、ある過ちを犯していたのかもしれない。」



ある一点の疑問が脳裏をよぎったのです。


ゲーリーの時は、脱水症状になるから、水分をしっかり取ったほうがいいというセオリーに従って、
水をたびたび飲んでいたのです。


もしかしたら、今噴出されている志村アースジェットは、さっき飲んだ水が、食道、胃、腸を直滑降してきたものではないか。

そんな一つの仮説を導き出しました。

溺れる僕が、掴むことの出来るワラは、この仮説しかない。

真っ暗闇だと思っていた中に、一筋の光を見い出す事が出来た僕は、ゲーリーが治るまで食べ物は、もちろんの事、水さえも飲まないという
断食という名の経済制裁を発動する事にしました。




やがて、夜が来ましたが、経済制裁もむなしく、トイレは相変わらず僕を呼び続けます。

そして、夜が更けて行くのですが、トイレのヘビーローテーションは以前、止む気配がありません。


ミイラ一歩手前の僕は、ベットで、眠ろうと努力するのですが、数時間おきに、トイレに呼ばれるので、やっぱり熟睡することもできず、空腹と睡眠不足による衰弱でHP(ヒットポイント)が、限界に達しかけていました。


さらに、日は昇り、また、月がポタラの町を照らし始めたその夜

もうぷっつりとトイレからの召集が止んだのです。


もう胃も、腸もすっからかんで出るものもすらなくなってしまったのでしょうか。
そういえば、
桃太郎電鉄でも、ウィルスカードは、他のカードを食い尽くすと消滅します。

もしかしたら同じ原理だったのかもしれません。

一日半も断食していたので、少しは栄養を摂って、HPを回復させようと思い、何か食べに行くことにしました。

外に出て、歩いてみると、フラフラとよろけてしまって、真っ直ぐに進めません。

それでも、一軒のレストランを目指して一歩、また、一歩と歩み続けました。

その店の名は、
エベレストステーキハウス

そこのステーキはぴか一のうまさで、大きさは、エベレストステーキの名の如く、鉄板の上に、
高くそびえているのです。

カトマンズにある一号店で食べて感動したので、是非、ここの2号店でも、もう一度行きたいと思っていました。



「だからって、今、行かなくても・・・。」


と呆れていらっしゃる方もいるでしょう。


「おかゆさんくらいの流動食の方がいいんじゃないの?」


と思っていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。



「また体調を壊したら今までの頑張りが無駄になるんじゃないか!?」




そう心配して下さっている方もいらっしゃるでしょう。







正直、僕もそう思っていました・・・。





衰弱し切った胃にステーキ・・・。


とっても
奇妙奇天烈な行動と思われるでしょう。













ただ、いつだって僕は、ドンキホーテだった・・・



困難にこそ、真正面から立ち向かってきた・・・


歩みを止めては、いけないのです・・・


迂回しては、いけないのです・・・




さぁ、食べよう・・・



ナイフと、フォークを手に・・・



エベレストの如く、高くそびえるステーキを・・・!









パクッ・・・。


む、む、む・・・。


ま、まずいんやけど・・・。これ・・・。


実は、この店のステーキは、
バフ(水牛の肉)を使っているので、かなりまずいのです・・・。

果たして、今、こんなリスクを冒してまで食べる価値があるものなのか・・・?

僕のナイフとスプーンが、ピタリと止まってしまいました・・・。

まずくて、食欲があんまりないのにも関わらず、まだこんなにそびえちゃってます・・・。



こんなに残して、店を出にくいし・・・。


日本人は、贅沢な奴等だと思われたくないし・・・。


なによりもったいないし・・・。





・・・







・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・





食べちゃえ・・・♪















我輩の辞書に学習という文字は無い・・・。

























世界で一番熱い店






たいていの人たちは、自分達の性格を予想したり、判断したりする時には、このような聞き方をするでしょう。


「あなたって、B型でしょう?」


って、聞いてみたり、


「君って、絶対、Mだよね。」


って、いう話はみなさんも、必ず一回は、したことがあると思います。


ただ、
関西には、血液型、星座、SかM以外に、もう一つの分類方法があります。



学校でも、会社でも、コンパでも重要視されるとっても大切な事です。



ボケ か つっこみ かです。



この役割は、芸人さんだけでなく、我々一般人にも求められる当たり前スタンダードな事なのです。

なので、
愛の伴侶を探し出すはずのコンパの場でさえも



「じぶんって〜、ボケぇ〜?つっこみぃ〜?」



と、言う声が自然に聞こえてきたりします。

きっと関西人は、
人生の伴侶=人生の相方 という見解を持っているのかもしれませんね。


関西人にとっては、血液型よりも大切な性格判断なので、ボケや、つっこみのの比率によって、グループでの自分のポジショニングを変えなければならない時も出てきます。

グループに一人でも、天然系の人がいると全員が、つっこみに早変わりしたりもします。

僕は、どっちかというと、つっこみの方かなぁって思っています。










ネパールは、トレッキングで有名です。

なので、アウトドアーショップが沢山、軒を連ねています。ネパールはあんがい寒いので、ジャンパーを買うことにしました。

とにかく、めっちゃめっちゃ沢山の店があるので、見て回るのも時間がかかってしまって一苦労です。

何軒か見た後、人の良さそうなおにいちゃんのいる店に入ってみました。

部屋の中、アウトドアグッズで敷き詰めれれている感じの店です。

僕は、服屋の店員さんと話をするのは苦手なので、一人でこっそりと見ていました。


でも、店員のお兄ちゃんがこっちにやってきてしまいました。

そして、僕にオススメのジャンパーを出してきました。


「これどう?」


手渡されたジャンパーを見てみると、なんと、patagonia (有名なアウトドアブランド) です。ただ、値段が700円なので
1000%バッタもんです。


ただ、もう一つ気に入りません。バッタモンだからと言う意味ではなく、ネパール人と日本人のセンスの差なのでしょうか。

やっぱり、人に薦められるより自分で選びたいなぁって思っているのに、商売熱心なお兄ちゃんは、さらに薦めてきます。


「じゃぁ、これは、どう?」


手渡されたジャンパーを、よく見ると、patagonia って書いてある
胸のタグのサイズに違和感があります・・・。

そして、その違和感の元凶が判りました。






これっ・・・





タグ、
めっちゃ小っちゃいやんっ・・・!





即却下しました。

あんまり
露骨なバッタモンは、見栄っ張りな貧乏さんっぽいので、それだったら無メーカーの方がマシです。

僕の呆れ顔とは、反対におにいちゃんは、腑に落ちない顔です。

もっとも、本物のパタゴニアを見たこともないので、タグの大きさなんて知らないのでしょう。


また、違うジャンパーを持って来てくれました。


「これはどう?」


手渡された、ジャンパーを見てみると、なんか、
嫌〜な違和感を感じます。






これっ・・・





タグ、上下逆さまやんっ!






僕は、なんだか笑えてきました。

なんで、こんな間違いが出来るのでしょうか・・。

さすがに、上下逆には、お兄ちゃんも、
苦笑いです。

またまた、違うのを持ってきました。

今回は、タグもバッチリです。

気に入ったので、このジャンパーを羽織ってみました。

そして、チャックを閉めようとすると、







あれっ・・・







チャック、内側についてるやん!





チャックの
動かす部分が、外側でなく、体側に付いてしまっているので閉められません。

このレベルまで行くと、
パタゴニアのバッタモンに留まらず、ジャンパーのバッタモンです。


お兄ちゃんは、
ゲラゲラと爆笑し出しました。

もう笑うしかないのでしょう。

僕も、
超一流のバッタモンの品揃えの良さに、笑いが込み上げてきました。


そして、お兄ちゃんは、まだ笑いながら、次のジャンパーを持ってきました。

今度は、ノースフェイスです。



「ハッハッハッハ!!これは、どう?これは、インナーとアウターがセットになってて、熱い時は、このチャックでインナーを外せるよ。」

「おおっ!それ見せて、それ!」

「ただ、これは高いよ。」

「いいよ、いいよ。貸して。」

確かに高性能です。

値段も高いと言っても、たかが、1000円くらいなのです。

張り切って、羽織ってみました。確かに、インナーもしっかりしてて暖かい。

田舎もんの僕は、日本でも見たことのない逸品です。

今度は、チャックもしっかり付いています。しかし、また、チャックを閉めようとしたのですが、閉まりません。






「・・・お兄ちゃん・・、これまた、あかんやん・・・。」






すると、お兄ちゃんは、僕の着ているこのジャンパーのチャックを手にとってチキチキと閉めだしました。




「ちゃんと閉まったよ」




と、
お兄ちゃんはとっても満足気です。




ただ・・・




左のインナーのチャックが、左のアウターについて、




右のインナーのチャック右のアウターについてるし・・・




















前、開きっ放しですやんっ・・・!










「ぎゃははっははははっは〜」


僕もつられて、笑いが止まらなくなってしまいました。


「ぷぷぷ・・・ぷわはっはっはははははははは〜」





この後、僕と、お兄ちゃんは、お腹がよじれる程笑い合いました。


英語でこんなに笑い合ったのは、初めての体験でした。


その後、この中で掘り出し物の、ジャンパーがあったので、購入しました。


僕は、このいろんな
超アウトレットジャンパーに笑わせてもらってたのですが、

おにいちゃんは、
大きな負の在庫を抱えた事になぜ笑っていられるのか

謎でした。



それが、ネパール人の持つ、おおらかさ、明るさなのかもしれません。

その
持ち前の明るさで、この超アウトレットなジャンパー達を、


平気でまた、誰かに売っちゃうんやろなぁー。








               ネパール編   



               インド編に続く