序章  折れた心 もがれた翼・・・





「僕に、また旅をする意味を教えてくれますか?」



これは、僕がスペインからラオスで出会ったみきちゃんに出していたメールです。みきちゃんは、ラオスからインドに渡っていました。

この時、実はもう旅を辞めようと思っていたのです。

モロッコ、スペイン、フランスで完膚なきまでにボロボロに打ちのめされた僕は、旅をする理由自体見失っていました。


あんな悲惨な目に遭ってまで、旅を続けて何になるんだろうか。


旅にさえ出なければ、あんなつらい想いをしなくて済むのではないだろうか。


僕は、何故、旅をしているのだろうか・・・・。


旅は、僕に何を与えてくれるのだろうか・・・・。


そう悩み、心が折れてどんどん嫌な方向へと考えていってしまう負のスパイラルに陥っていた僕を、みきちゃんはインドに来ないかと誘ってくれていたのです。

正直、みきちゃんに会いに行くという名目がなかったら、僕は二度とバックパックを背負ってなかったでしょう。



ただ、みきちゃんの返信メールはいたって淡白で・・・



「あんまり深く考えんとインド来なさい。
 じゃ。」




のみでした・・・。



僕は、インドに向かって旅立つ決心をしました。




数々の
インド伝説を耳にしていました。


それは、


殺人、

強盗、

強姦、

恐喝、

暴行、

盗難、

イカサマ、

嘘、大げさ、紛らわしい、

不潔、

酷暑、



また、存在する

難病、

大病









事実、僕の兄はインドに行って、帰国2年後に突然原因不明の高熱にうなされ、病院に行くと血小板の異常な減少しか判らず。

数週間苦しみ続けました。


その後、日赤病院に行くと、マラリアと診断されました。

マラリアは日本で年間5人程しか発症しないので、普通の病院では診断されにくいのだそうです。

わずか5人のための薬なので、日本には無く、海外から取り寄せなければなりませんでした。


そんな修羅の国でもまれたら、また、旅に新たな意味を見出せるんじゃないか。

そう思えたのです。

ただ、僕が家族にインドに行く事を告げると大反対でした。


「ただ、僕は、どうしてもインドに行かなくてならない」


そんな熱烈な説得の下、しぶしぶですが理解してもらう事ができました。

たしかに、兄貴が原因不明の高熱にうなされている時の父ちゃんと、母ちゃんの気持ちを察すると、二度とそんな思いをさせたくはない。

そう思ったのですが、僕にとってもここが人生のターニングポイントであり、どうしても譲れない選択だったのです。


どうせ行くなら、日本人代表として沢山のインド人と戦ってみたい。

沢山の事件の中で、何かが見えてくるかもしれない・・・。

僕の中の何かが変わるかもしれない・・・。


そう考えた僕は、タイでサッカー日本代表のユニフォームをホームとアウェイを2着づつ、計4着買ってきました。


これを着て、日本人をアピールすれば、おのずとインド人達の標的になる。


左腕には、日の丸もついてる。







これで、僕の復活を飾るにふさわしい、舞台と準備が整った。






時は、満ちた!







さぁ、かかってまいられよ!!








10億の民!  インド人達よ!!