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襲撃、恐怖の夜・・・




ヒンドゥー教の聖地バラナシ。

ここは、ガンジス川の流れのようにゆったりと時間が流れていました。

怒涛の初日が嘘の様に平和な日々を送っていました。

特にすることもないので、いっつもまったりと過ごしていました。


ガンジス川沿いで落花生をかじりながら、チャイ(インド風ミルクティ)を飲んでいると、いつもここのチャイ屋で同じ日本人のお兄ちゃんと会うので、仲良くなり、2人してここで、毎日ボーっとチャイを飲んでいました。

すると、カンボジアとベトナムで一緒だったお兄さんとばったり出会いました。4ヶ月ぶりの再会でした。

僕らは3人になりましたが、することと言ったらいつも一緒。


朝、昼、晩、ガンジス川を眺めながら、熱いチャイをすする。

1時間150円のレンタルボートを借りて、ガンジス川で擬似デートをする。

僕が持っていた野球のゴムボールと、サンダルをバットにして、その辺の暇そうなインド人を3,4人捕まえて三角野球をする。

やってると、どこからか、どこからか猛烈に怒り狂った牛がガンジス川沿いを走ってきて、みんな、しゃかりきコロンブスになって逃げ惑って、即席牛追い祭りが始まる。

路上マッサージ屋のおやじにマッサージを30分でお願いしたのに、僕が寝てるのを良い事に45分以上やり続けてて、料金でもめ、口論になる。

レストランに行って、オムライスを頼んだらケチャップをきらしてるのを黙って作っちゃって、またまた口論になる。



全く書くに値しない日々を過ごしていました。


でも、そんな日々は僕にとってとっても居心地がよく、宿に帰ると毎晩9時とか10時になっていました。


みんなは、クミコハウスや南の方の宿に泊まっていましたが、屋上からガンジス川がよく見えると薦められていたので、僕一人、北の離れた場所にあるプージャーゲストハウスに泊まっていました。

なので、毎晩みんなと別れたあと、電気も消えて真っ暗な中を10分くらい一人でとぼとぼ歩いて帰っていました。

今までは別に何とも思わなかったのですが、ある日、その暗さが妙に怖くなってきました。

地球の歩き方に投稿されてた話を思い出したのです。

バラナシはとても狭い町なのに外国人旅行者の行方不明者が年間40人も出ているらしいのです。


と言うことは、月間3〜4名です。




つまり、一週間に1人・・・!




ものすごい頻度です。

昼間はのんびりしてるバラナシなので、事件はおそらく夜に起こっているのではないか!

であるとすれば、こんな明かりの無い狭い夜道が一番危なく、もしかしたらここで襲われているのかもしれない・・・・・。

そう考えたら本当に怖くなってしまって、気が付いた時には、すでにサンダルをパタパタ鳴らしながら、わき目も降らず、一心不乱に走り出していました。

明かりの消えてしまった真っ暗闇の川沿いをひた走り、


浮浪者が寝付いているトンネルを駆け抜け


急斜面の、クネクネとした階段を駆け登りました・・・・。



あまりに全力疾走で走り続けたので、ホテルに着いた時、僕の息はかなり上がっていました。




ぜーぜーぜー・・・。




そんな僕の姿を、フロントにたむろっていた従業員のお兄ちゃん達に不思議そうな顔で見られながらも、本当に怖かったので、お兄ちゃん達の元に帰ってこれた事が、すごく嬉しくてホッと一息つく事ができました。


そして、階段を登り2階にある僕の部屋の前に着きました。



すると、




なぜか部屋に明かりがついている・・・!!



そればかりか、




出かける時にドアに必ず掛けているはずの南京錠が無いっ・・・!!





この状況で考えられる事は、何者かの侵入・・・。

泥棒が何かを盗みに入ったのかもしれないし、宿の従業員が何かしらの理由で部屋に入っているのかもしれません。

ただ、夜の10時に宿泊客の部屋に入る必要があるのか。それに、さっきフロントで宿のお兄ちゃん達に会ったけど何も言ってこなかった。

と、すれば、前者の可能性が高い。

僕は恐る恐るドアノブに手をかけました。

そして、ゆっくりと静かにノブを回してみました。

が、しかし、ノブが回らないのです。内側からカギが掛かっているかもしれません。

僕の中には、徐々に焦りと共に恐怖心が込み上げてきました。

僕に部屋に入られたら困り、内側からカギをかける理由はただ一つ。




盗み・・・!!




もし、従業員が何かしらの用で入っているのなら、カギは開けたままのはず。


僕は、力でドアをこじ開けようと、



ガチャ!ガチャ!ガチャ!ガチャ!!ガチャ!ガチャ!ガチャ!!ガチャ!ガチャ!ガチャ!!


何度も何度も、ドアノブを力強く回しました。

それでもドアはビクともせず、部屋の中から物音一つしません。ただ、侵入者はこれでもう僕の存在に気が付いたはずです。

どのような反応に出てくるのか。

僕の部屋は、外に向かってドアも無ければ窓さえないので、出口といえばこのドアだけです。

もしかしたら、いきなりドアを開いて出てくるかもしれない。

侵入者にとって、時間をかけると言うことは不利なことです。
僕が誰か助けを呼ぶかもしれないし、その誰かがポリスを呼びにいくかもしれないからです。

とすれば、今、僕が一人であるこのタイミングなのです。

その際、武器を持っているかもしれない・・・。

もし、武器を持っていたら太刀打ちできるのか。

僕は一応柔道初段を持っているのですが、今まで一度も実戦で使った事がありません。

今日、初めて畳の上以外で使う事になるかもしれない。そして、初めて人を傷つけてしまうかもしれない。

でも、武器を持っていたら僕自身も相当の傷を覚悟しなければならない。








ドンッ!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!







僕は、恐怖を押し殺しながらも、精一杯ドアを強く叩き続けました。




「・・・・・・・・・・・。」




それでも、中からなんの返事もしないし、物音一つしないのです・・・・。





おかしい・・・。




何かおかしい・・・・。











ふと・・・


ふと、何か違和感を感じました。

今までのロジカルな憶測、推理を超越したものなのです。

それはつまり、ただのインスピレーションです。でも、かなりの自信があったのです。











もしかして・・・・








僕は、ある重大な間違いを犯していたのかもしれない・・・。









もしかして・・・・










・・・・ここは・・




・・・・2階・やけど・・










僕の部屋って・・・・・3階ちゃう・・・??



















その違和感が、現実だと気付いた瞬間、ベンジョンソン級のロケットダッシュでいちもくさんに逃げ去りました。

僕の勘違いで、あの部屋の人を恐怖のどんぞこに落とし入れたに違いありません。

なんてったって年間、外国人旅行者が40名も殺されているこのバラナシで、夜中の10時にいきなりドアノブがガチャガチャガチャと回り始め、何者かが無言でドアがをドンドンドンと叩き始めたら、襲撃と勘違いし、恐怖に身をやつし、声も出ないはずです・・・。



それまで僕も同じく恐怖に身をやつしていて、かなりの疲労を感じていたので、申し訳無いという気持ちとは裏腹に、ことの他早く眠りにつき、その眠りは、ことの他ぐっすりんこでした。