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ワンダフル カンボジアンナイト





                 
(カンボジアのお金 1000リエル 約30円)





シェムリアップ1日目の夜



アンコールワット観光を終えた僕は1人で宿の食堂で休んでいた時、この宿に常駐しているバイタクドライバーの超角刈りのお兄ちゃんが近づいてきました。


僕は、また面倒くさいやつが来たと思い、視線をさっとそらしました。


と言うのも、この角刈りくんは、まいどまいど呪文の様に連呼する言葉が決まってて、話し出すとかなり面倒くさいのです。





「 ヒロコ、MY GIRLFRIEND!


 
ヒロコ、VERY BEAUTIFIL!」



このヒロコさんが誰だかわからないのですが、よほど溺愛しているのでしょう。ただ、ふた言目にはヒロコ、ヒロコなのではっきり言ってかなりうざったいのです。


そして、角刈りくんの着ている白いTシャツに、そのガールフレンドのヒロコさんに書いてもらったという、愛のメッセージらしきものを、見たくもないのに、一方的に見せつけてきます。


この時、すでにもう僕の
飽和うざったい量が、はるかに超越してしまったので、うざったさが変化して怒りになってきました。


なので、メッセージなんて見るよしもなく、見るふりだけして、軽く無視っときました。


そんな僕のお寒い温度とは対照的に、おアツイ恋に煮えたぎってる角刈りくんは、どうでもいいのに、馴れ初めについて説明してきます。


残念ながら、聞く気ゼロでも勝手に耳に入ってきてしまいます。


ヒロコさんは、つい最近までこのハローゲストハウスに泊まっていた、とてもきれいな女性バックッパッカーで、僕がここにくる少し前に旅立ったそうなのです。


いったいなぜ、その美女と、野獣の様な角刈りあんちゃんとがお付き合いする事に至ったのか。




360°どっからどうみても、惚れる要素ゼロの角刈りっぷりです。




僕でさえ彼女がいないのに、こんな角刈りくんが、なぜ・・・そんな綺麗な女性とお付き合い出来るのか・・・・。



さらにとめどない怒りが込み上げてきました。



その怒りが僕を動かしました。


このハローゲストハウスに前から宿泊してる、僕らが到着したあの時に出迎えに出てきてくれた日本人のお兄さんの元へ走りました。





もしかしたら、あのお兄さんならヒロコさんと滞在時期がかぶってて、ヒロコさんの事を何か少しでも知ってるかもしれない。




お兄さんを見つけるや、否やこの質問をぶつけました。




「えっ!? ヒロコさんと角刈りくんが付き合ってる?


 
全然っ!!


 付き合うどころか、角刈りくんがヒロコさんをいつも無理やり誘ってただけだよ。



 
すげー嫌がってたから・・・・。



 ・・・・・・・・・・・。


 んっ!?


 ヒロコさんが、すごい綺麗な人だったって・・・・??



 ぷぷぷぷっ・・・・・。



 ヒロコさんは、
すっげぇーブスだったよ。」







これを聞いた時、心の中にこびりついていた嫌な感情がすっと浄化されていくのを感じ、また新しい感情の息吹を感じました。



安堵感・・・・。




いや、それもあるのでしょうが。それ以上に込み上げてくる熱い感情。



それは、角刈りくんへの、もてない男同士としての




友情・・・。















「晩ご飯一緒に食べに行かない?」



次の晩、角刈りくんが僕を晩ご飯に誘ってきました。

昨日までなら間違いなく断っていましたが、今はすでに
ブラザー

即決オーケーしました。


それにどんな地元ッティなお店に連れて行ってくれるのか。かなり期待大です。


ジン君も喜んでくるだろうと思い、部屋誘いに戻ると、今日は疲れてるので宿に残ると言います。


反対に、角刈り君が友達を連れてきました。その友達は、無口な上、筋骨隆々、かなりいかついガタイのあんちゃんです。


その上、顔に激しいキズがあるので、さらなる迫力をかもしだしてて、はっきり言って怖いです。



僕は角刈りくんの後ろに乗せてもらい、いかついあんちゃんは、自分のバイクをまたぎ、さっそく角刈りくんのお勧めのお店に直行しました。


すると、いくらも走らずにそのお目当てのお店に到着しました。


店の外までテーブルと椅子が溢れる様に並び、カンボジア人率100%のお客さんは店の外までいっぱいで大繁盛です。


相当美味しいお店なのでしょう。付いて来て大正解でした。


この大勢のお客さんが食べているものは、焼肉。

みんなお肉をジュージュー焼いて美味しそうにほおばっています。焼肉大好きな僕は、そんな姿を見ているだけで、口の中によだれが溢れてきます。


店の外のテーブルに案内され、さて注文をと言いたいところですが、お客がカンボジア人100%だけあって、店員さんもクメール語しか話せず、メニューも出してきてくれる気配もありません。


ここは、角刈りくんにお任せするしかありません。ただこんな繁盛しているので、きっと何を頼んでも間違いないでしょう。


角刈りくんがクメール語で、何かを注文し、しばらくすると店員さんが、七輪とお肉をテーブルに運んできてくれました。


まさに、カンボジアンBBQです。

おそらくこの店の大将の手作りであろう、この手作りの木の机に椅子。

赤茶色の土の地面の上にして、真っ赤な夕焼け空の下。

このカンボジアの大自然の中で育った牛や、鶏がブロイラーなはずがありません。


本当の贅沢なディナーが今、始まろうとしているのです。



網の上に肉をのせ、肉が赤から茶色に変わるや否や、僕らは、いっせいに肉にがっつきました。




この美味しさ・・・とってもわんだふぉ〜




僕は箸の速度を少しも落とすことなく、お肉を皿から網へ、網から口へとガンガン運び続けました。




と、ある事に気が付いたのです。


この皿の上に、2種類の肉があるという事。


どうやら一方は、普通の牛肉っぽいです。もう一つの肉の味が微妙で、ブタなのか羊なのか判断しがたいところです。


なので、肉をほおばりながらも、角刈り君に聞いてみました。



「くちゃくちゃくちゃ。WHAT IS THIS?くちゃくちゃくちゃ。」



角刈り君も、お肉に夢中です。彼は、めんどくさそうにお肉をクチャクチャ噛みながらこう答えたのです。








「くちゃくちゃくちゃ。MMM・・・・? DOG。くちゃくちゃくちゃ・・・・」












「ぶぅっっっっ!!!!」













一瞬、肉を吹き出しそうになりました。

なんてったって僕は、わんちゃんが大好きなのです。

そのわんちゃんを、今自分ががっついて食べているなんて信じられないと言うか、気持ち悪いと言うか、可哀想というか、色んな気持ちが
ヘレニズムしています。


それから、かなり食欲が減退してしまったものの、お腹も減っているので、牛さんのみに集中して箸を伸ばして食べていました。



ただ、よくよく考えてみると、牛さんとワンちゃんとなら、きっと牛さんのほうが高いはずです。


牛さんは飼育費にかなりお金が掛かりそうだけど、野良わんちゃんなら、
原価はゼロなはずです。


きっと角刈りくんたちも、牛さんをお腹一杯食べたいだろうけど、そんな裕福じゃないから、単価の安いワンちゃんも一緒に食べて、ボリュームを出しているのでしょう。


それは、日本人の僕が焼肉をするときにも十分に心当たりのあることです。



そんな中で今僕は、彼らの目の前で、高い肉だけを食べています。


そんな僕は、一体この二人の目にどの様に映っているのでしょう。


きっと、



「とりあえずお前らについて来たものの、やっぱりお前らカンボジア人たちなんかと同じレベルの物は食えねーよ。」



なんて思ってるとても傲慢な日本人だと思われているのではないでしょうか。
彼らはそんな気持ちを少しも表情に出さないのですが、絶対に心の中ではそんな僕を軽蔑し、悲しい思いを抱いているはずです。


たとえ僕がそう思っていようといなくても、2人を傷つけた事には違いないのです。


そう悟った瞬間、僕は、ワンちゃんへぐっと箸を伸ばし、焼き、噛みちぎり、目一杯ほおばりました。


そもそも牛だろうと、ブタだろうと犬だろうと同じ生き物です。


僕ら人間は、他の生物の命を糧にしないと、自分の生命を維持することが出来ないという悲しくも、罪深き生き物なのです。つまり僕らの命の土台には数え切れない程の命があるのです。


本来ならば、糧にさせてもらってきた生物に感謝し、その命を奪う罪を深く自覚して、自分自身の天寿をまっとうすると言う事が大切なのに、「犬や猫はペットだから」、「可愛い動物を食べる人が信じられない」などと非難し、牛やブタや魚だけを悪びれずに食べ、自分に罪の意識を全く持たない者は、自分自身の闇の部分を覆い、目を向けようとしない偽善者にして、卑怯者です。


この2人からすると、僕こそが、まさにその偽善者にして、卑怯者なのでしょう。


申し訳ない、そんな思いを咀嚼に込め、ワンちゃんを頂いていると、ふとある素朴な疑問が頭をよぎりました。


そして、その質問を思い切って角刈り君にしてみました。





「牛肉と、犬ってなんぼくらい値段が違うの・・・・・?」





すると、角刈り君は、またさっきの様にめんどくさそうに答えました。





「くちゃくちゃくちゃ。MMMM・・・・??

 SAME SAME
(同じ 同じ)くちゃくちゃくちゃ。」






・・・ワ・・ワンだふぉー・・・。










・・・・・その後、僕は
牛さんだけ選りすぐって遮二無二食べ続ける偽善者にして、卑怯者に成り下がったという事は説明するまでもないでしょう。







そして、お腹いっぱいになり、お勘定の時が来ました。


僕の経験上、こういう時は一番お金を持っている日本人の僕がせびられます。


でも、それでもいいのです。こんな地元ッティ御用達の焼肉屋さんに連れてきてもらえた経験はお金に代えがたいものです。


と思っていると角刈りくんが勝手にお支払いしてくれました。僕は、自分の分だけでも払うと言ったのですが、角刈りくんは軽く「いいよ」と言って流し、ご馳走してくれました。


すると、顔の怖いあんちゃんが、次行こうと言い出したのです。

僕は嫌な予感がしてきました。

昨日の夜、トムに連れて行かれたカラオケを思い出したのです。

その悪夢の再現を恐れ、これでもう帰ろうと試みたのですが、いかついあんちゃんの行きつけの店があるという勢いにのまれ、僕らはバイクに乗り、その店へと連れて行かれました。


着いた所は、カラオケではなく、どうやら露店の様です。

路上にビーチパラソルとかなり使い込んだプラスチックの椅子とテーブルが2つ3つおいてあるだけの、ぽっつりとたたずむお店。


すぐそばにバイクを停めた僕らは、そのブラスチックの椅子に座るとすぐにあんちゃんは何かを注文しました。すると、店のおばちゃんは汚い瓶を傾け、トクトクと一つのプラスチックのコップに透明な液体を注ぎ始めました。

きっと、焼酎かなにかの様です。


どうやら回し飲みをする様でまず、いかついあんちゃんが飲み、角刈りくんが飲み、回ってきました。あんちゃんの話では、やっぱりカンボジアの焼酎だそうです。


ただ、何回も使い回している汚い瓶に入ってて、プラスチックで飲む得体の知れない焼酎。

かなり抵抗があります。思い切ってグビッっと飲んでみました。


この酒の強い事・・・・。


そして、僕は生粋の酒飲みではないので、つまみがないと酒が飲めないのです。どうしたものかと戸惑っていると、あんちゃんが店のおばちゃんにクメール語で何かを頼みました。


すると、おばちゃんは、またまたお世辞にも清潔ですねとは言えない、大き目の瓶の中から串刺しにした魚の干物を出してきました。

それを受け取ったあんちゃんは、ガブリと噛み付き、クチャクチャと噛みちぎりながら、僕にもその干物を手渡してくれました。


どうやら、この干物も3人で回して食べるみたいです。


ただ、またなんの魚か全く検討も付かないので、恐る恐るちょぴっとだけかじってみました。


すると、この干物、とっても身が引き締まっていておいしいのです。なので、今度はがっつり食べてみました。






「これ美味しいね。で、これってなんなの??!!」






「MMM・・・?SNAKE(蛇)。」









「ぶっっっっっ!!!!」







ただ、このヘビ以外に食べる物を注文してくれる気配も無く、酒を飲むにはヘビを食べなきゃいけないので目をつぶって食べる事にしました。



そして、また時間はゆっくりと過ぎていき、お勘定になったので、さっきご馳走になったから、今度は僕が払おうとポケットから財布を出そうとしたのですが、いかついあんちゃんがさっとお金を払ってくれました。


日本人である僕は、しばしばお金目的のスポンサーで呼ばれ淋しい思いをする事がまれにあるのですが、今回は、2回も続けて払ってくれました。


なんだかそんな些細な事で、僕を本当の友達として認めてもらえた様な気がしました。



そうこうしてる間に、さらに次に場所を移そうと言う話になっています。


仲間として誘われるので、それはそれでとっても嬉しい事なのですが、さっきから昨日のカラオケのトラウマが頭から離れません。もうあのカラオケだけは行きたくないのです。





昨日の夜に、トムや弟君たちと一緒に行ったカラオケ。





当然、カンボジアの歌しかないので、一度もマイクを待つことも出来ず・・・・


モニターには、全く読めないクメール語の歌詞がひたすら流れ、読むこともままならず・・・・・



演歌の様なゆったりとしたリズムですが、人生で一度も体感した事の無い不思議なリズムに音頭をとる術もなく・・・・


初めてのリズムにして、100%超音痴に違いないトムたちの、ど下手な歌で手拍子のリズムさえもつかめない退屈な時間・・・・。







あの恐怖の時間が今夜再び、やってくる・・・・。







そう考えただけで思わず身震いし、身の毛もよだちます・・・・・。



僕は恐る恐る角刈りくんに尋ねました。




「もしかして、カラオケ・・・・?」





笑いながら首を振った角刈り君は、何も言わないまま、僕をバイクに乗せ次の3次会が行われるであろう場所へ向かって走り出しました。



カラオケじゃない。


そのことに僕はほっと胸をなでおろしました。


ただよくよく考えてみると、角刈り君普通にあの強い酒飲んでたよね・・・・。




しかも、ここシェムリアップはノーヘルがスタンダードで、例外なく僕らもノーヘル・・・・・・・。




地面は、もちろん舗装なんかされてなくデコボコ、周りは真っ暗闇・・・・・。





・・・・・・・・。



「お、降ろして〜!!


 いやっ!!


こんな所で降ろさないで〜!!!!」






        ワンダフルカンボジアンナイト PARTT 



                 終わり