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めちゃめちゃ かんたん
 
 






シェムリアップ出発の朝


プノンペン行きのスピードボートの発着場へ向かう為、僕らは宿に迎えに来てくれたピックアップトラックという乗り合いトラックの荷台に乗り込みました。


早朝の5時だと言うのに、このフレンドリーゲストハウスのみんなが総出で見送りに来てくれました。


そして、トラックはゆっくりと走り出し始めたとき、トムをはじめ、みんなが笑顔で手を振りだしてくれました。


僕も大きく手を振り、トムに「BYE BYE!」と言おうとしたのですが、不意に喉が詰まりました。


声が出ないのです。


仲良くしてくれたみんなやトム。短くても楽しかった思い出いっぱいの5日間を振り返ると、胸の内にものすごく熱いものが込み上げてきて、「BYE BYE」、その一言を言う事により、今まで押さえ込んでいた感情が涙になって、いっきに外に溢れ出ようとしているのです。



なので、みんなの姿が見えなくなるまで、ただただ手を振り続けたのです。














シェムリアップ到着の夜





車が宿の駐車場に入ると、10人以上ものカンボジア人が次々に、ぞろぞろと宿から出てきました。

見た目の怖いカンボジア人がこんなにも大勢で出てくると、はっきり言ってかなりの迫力です。


恐らく寄ってたかって、僕らを宿へ引き込みに来たのでしょう。


なので、少しでも早くここから立ち去り、あらかじめガイドブックで決めていた宿に移動したかったのですが、残念ながらこの宿が、この町のどこに位置するかがわかりません。


荷物を降ろした欧米人は、どうやらここの位置を把握しているらしく、早々とこの駐車場から出て行きました。


そして、予想通りカンボジア人たちが出遅れた僕らに部屋を見るように勧めて来ました。


僕とジンくん、慶応ボーイ&ガールは、話し合った結果、日も暮れてしまって周りに外灯すらなく、真っ暗な夜道を歩くのも怖いので、少々高くても、一晩くらいなら我慢して泊まろうという結論に至りました。



その時、宿からぞろぞろと、明らかにバックパッカーっぽい日本人のお兄さんが3人出てきました。僕らは、急いでお兄さんに歩み寄り、



「ここの宿、どうですか?」


と尋ねると、


「まぁまぁ良いですよ。僕らもここで降ろされて泊まっているから、他は判んないですけどね。」



と答えてくれました。なるほど、このお兄さんたちも僕らと同様にこの宿に連れて来られて、妥協して結局ズルズルと滞在してしまっているのでしょう。



ツアー会社とこの宿の計算どおりの運びです。



僕らは再度気を引き締め直し、まず、部屋だけは見せてもらうことにしました。ジン君と2人でシェアしようと決めていたので、僕らが見せてもらうのはツインルームです。


背のちっちゃいカンボジア人のお兄ちゃんに部屋を案内され、入った部屋はとても広く、清潔感に満ちています。



これは、相当ボッてくるに違いないっ!




このランクの部屋にして、ツアー会社へのマージンも含んだ代金。


なにより、僕らにとってはカンボジアで初めての宿。

国境から来て、まったく相場を把握していないのも当然知ってるので、向こうにとっては、僕らは絶好のカモなのです。



僕は、おそるおそるお兄ちゃんに部屋代を聞きました。



「HOW MUCH IS THIS ROOM?」



するとお兄ちゃんはさらりと答えました。




「TWO DOLLAR」






「MMMMMMMM・・・・・・??



 
sorry?







「TWO DOLLAR」



「・・・・・・・・・・・・・・


 ONE PERSON?」




「NO!ONE ROOM!」





「ONE ROOM!??」







「YES!」












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







疑って、ごめん・・・・・・。




っていうか・・・・・・




1人1ドルで泊めて、ツアー会社に、なんぼマージン払ってんの・・・・?








みんなは即決し、それぞれ部屋に入り、荷物を降ろしました。




トントンッ!




誰かが部屋をノックしています。なんだろうと思い、恐る恐るドアを開けると、また違うカンボジア人のお兄ちゃんです。





「君たち、明日からアンコールワット行くんでしょ?俺たち、バイクタクシーやってるんだけど、1日7ドルでどう?」





バイクタクシー(通称バイタク)とは、その名の通りバイクの後ろにお客を乗せて走るタクシーです。

アンコールワットは、正式にはアンコールワット遺跡群と言い、200くらいの遺跡群の集合体なのです。
これらをまわる際、公共機関は一切なく、車のタクシーをチャーターするか、バイクのタクシーをチャーターするかの2択なのです。


僕らも明日からアンコールワットをまわるつもりなので、良い機会なのですが、まだこの宿にずっと泊ると決めていません。

もし、メインストリートまで遠ければ不便なので、宿を替えるつもりなのです。


なので、これから町を散策して、この宿の位置、町の配置を確認してから、バイタクと交渉しようと思っていて、その話をお兄ちゃんにすると、





大丈夫!

 
 買い物や、ご飯を食べに行くときは、バイクで送ってあげるよ。」





「えー、でも
一回一回外出するのにお金掛かるやん。」





大丈夫!

 
タダでいいよ・・・・・・。」






「えっ・・・・!?


でも・・・・


朝から夕方までは、君もいるだろうけど、その後、家に帰るでしょ。 夜に喉が渇いて、スーパー行きたくなったら困るしなー・・・。」





大丈夫!


 俺たちここの宿に寝泊りしているから。」









「・・・・・・・・・・。



 ・・・・・・・・・・。


 
でもっ!!


君がこの3日間どこかに飯を食いに行ったりして、いない時に出かけたくなったら困っちゃうしなー!」







大丈夫!!



この宿には、他にもバイクタクシーのメンバーがいるから、言えば誰でも送ってくれるから。」










ま、参りました・・・・・・。



明日から3日間、どうぞよろしくお願い致します。





次の日の朝。


目を覚ました僕は、外の空気を吸おうと部屋のドアを開けて廊下へ出ました。

すると、沢山のカンボジア人が波止場に打ち上げられたイワシの様に転がっています。まさに雑魚寝です。

その中に昨日のバイタクのお兄ちゃんも寝転がっています。

寝泊りしてるとは聞いていましたが、まさか、このコンクリートの廊下に何も下に敷かず、タオルケット一枚で寝てるとは・・・・。




日が昇ると、昨日のお兄ちゃんがもう1人のバイタクのお兄ちゃんを紹介してくれ、計2台、計4名でアンコールワットへ向かいました。


昨日、僕らを勧誘しに来たこの背のちっちゃいお兄ちゃんの名前はトム。

バイクは、ホンダの110ccの原チャ。

この原チャは、どうやらトムのご自慢の新車の様です。

両親に借金して買って、僕らのような客から得た収入で、少しづつ返してるんだそうです。


トムは僕とおない年くらいで、とっても陽気です。

いや、トムだけでなく、ここカンボジアで出会う人たちは、本当に楽しい人たちでいっぱいです。


おかげで、僕の先入観の「カンボジア=怖い」 というイメージは、あっと言う間にどこかへ飛んで行ってしまいました。


アンコールワットまでの道中、トムはこの宿の日本人の人たちともかなり仲良しのようで、彼らとの面白かった話などを、ペラペラ話してくれ、二人でケラケラと笑っていました。


僕は、改めて共にするバイタクが楽しいトムで良かった。そう実感しました。














ただ、ひとつだけ気にかかって仕方ないところがあるのです。

それは・・・・・・、トムの陽気さが、話し方、雰囲気、笑顔だけにとどまらず、運転の仕方までもが、果てしなく陽気なところです。



トムはよく大げさに足を上に振り上げてたりして、ふざけて運転します。



そして、聞き取れないクメール語(カンボジアの公用語、僕との会話は英語)を、大声で叫びながら走るのです。

地面がしっかりと舗装されてなかったり、舗装されていてもデコボコのアスファルトだったりするので、通常以上に安全運転してもらわないと、かなり怖いのです。



なので、



「危ないよ〜。トム〜。」



と注意すると、またさっきのクメール語を叫び、ふざけだすのでまったく効き目がありません。


怖いけど、一応トムもバイタクのプロなので、ここはその腕前を信じることにしました。


それから、しばらく走るとトムは急にバイクを停めました。なにやら地面の上で何かを探している感じです。


何を探しているのか全く検討もつかず、トムに聞いても何にも答えてくれません。どうらや、僕には内緒のようです。


小石を見つけたトムは、「行こう」と僕をバイクに乗せ、再び走り出しました。

走り出したトムは、アクセルを右手で握ったまま、左手でアクセルをイジリ始めました。調子が悪いのかと見ているのですが、これもまた何をしているのか全く検討もつきません。


しばらく見ていると、左手でさっき拾った小石をアクセルの隙間に詰め込んでいます。









ま、まさか・・・・・・。





小石で、アクセルを固定して・・・・・



手放し運転〜!!!!




ストーーップ!!



トォーーーーム!!!






「スル〜オア〜ハ〜イ!!
(謎のクメール語)







今度いう今度は、
全身全霊で、手放し運転を止めさせました・・・・・。








アンコールワット遺跡群は本当に感動の遺跡です。

ただ、200近くもあるので全部には行かず、主要なところを10数ヶ所だけ回るのです。それでも、一つ一つ離れていたりするので、一日で回れる数は限られてきます。


入場パスも、1日券20$、3日券40$、7日券60$と売っていますが、僕が聞いた旅人情報では、主要な見どころは、2日あれば、十分見て回れるとのことなのです。

ただ、3日券と1日券2枚買っても、結局は一緒の金額になるので、とりあえず3日券を買いました。


それでは、
感動のアンコールワット僕の素敵な句と共に、しばしお楽しみ下さい。






〈人の世の 盛衰どこぞ 知らぬ顔    

    我ひっそりと たたずむ森に 〉
               








〈この場所に 宮崎駿男 訪れて

    ラピュタが出来た 噂ありたり〉









〈幾人の 番人構え 敵を待つ

    探してみてよ ウォーリーと僕〉












〈土産売り ゲッツとオッハー 使うなり

    呆れた僕も ガチョーン教える〉




    






〈好きじゃない パパイヤジュースは 飲まずとも

      食べたらうまし 中の白い実〉










〈仲良しな 姉妹を見つけ 足を止め 

      思い出したる 風あざみ〉










〈その姿 時代とともに 朽ちるとも 

     まぶたに浮かぶ 隆盛の日々〉












その姿 時代とともに 朽ちるとも 

     まぶたでふさぐ 隆盛のバカ〉











このトムと過ごす時間はとても楽しく、僕とトムはどんどん仲良くなっていきました。


ある時、トムに何回も連呼している謎のクメール語「スルーオアハーイ」の意味を聞いてみました。


すると、トムは


「VERY EASY (めちゃめちゃ かんたん。)」


と教えてくれました。

なんでも、宿にいる日本人のお兄さんに色々とクメール語を教えていると、この単語の発音が悪すぎて、周りのカンボジア人たちで大笑いしたのだそうです。

それからというもの、宿では、この「スルーオアハーイ」が、一大ブームになっているそうです。


この話を聞いてから、この「スルーオアハーイ」は、カンボジアでの笑いの合言葉になり、色んな人に使って、みんなで笑い合っていました。





2日目は、トムにアンコールワットから見える日の出を見に行くと言われていました。

ただ、前日の晩、僕は夜遅くまでお酒を飲んで夜更かししていたので(次節参照)、朝早く起きられずにベットで丸まっていました。

すると、ジン君はもう1人のバイタクの兄ちゃんと先に行ってしまいました。やがて、最初はドアを叩いて呼ぶだけだったトムは、とうとう部屋の中に入って来ました





「あと5分だけ寝かせて〜。」




と、まるで学校に行く前に母ちゃんにだだをこねる子どもみたいですが、一向にトムは僕を起こしにくる気配がありません。


これ幸いと引き続き寝させてもらっていたのですが、やがてトムが


「日の出に間に合わなくなっちゃうよ〜!」


と体を揺さぶって本格的に起こしてきました。


さすがに寝ていられず、ようやく目を覚し、重いまぶたをこすりながら起き上がり、トムの方へ目をやると、僕がバンコクで買ったお気に入りのレッドブルTシャツを勝手に着ちゃってます。






「・・・・・・・。トム、あかんって。返せ〜っ!」





と、寝起き早々、もみくちゃになってTシャツ奪還を試みたのですが、一向にトムは脱ごうとしません。

その時、ある名案がひらめいたのです。



「わかった!じゃぁ、Tシャツの交換をしようよ。そのTシャツあげるから、トムのTシャツも一つ頂戴や。」



「オッケー!!」





そう言い残すと、トムは僕のTシャツを着たまま部屋を出て行きました。


僕は、現地の言葉が書いてあったり、現地センスのTシャツが大好きで、

そのマニアックさは
みうらじゅんに匹敵するといっても過言ではありません。




いや、完全に過言でした。






・・・・・ただ、必ずと言って良いほど、訪れる国ごとで現地のTシャツを買うので、トムがどんなTシャツを持ってきてくれるかが楽しみです。




ただ、あまりにもボロボロのTシャツだったら断ろう。



それだけは譲れないと、不安と期待が入り混じった複雑な心持ちで待っていると、トムが帰ってきました。その手には白いTシャツを持っています。


手渡されたTシャツをゆっくりと広げると、多少着古していますが、まぁまぁきれいで、第一関門突破です。



気になるデザインはと言うと、クメール語の文字が書いてあって、絵としては、めちゃめちゃへたくそな少年と少女が水辺で立っています。





「これ、なんて書いてあんの・・・・?」




「ゴミを捨てるなって書いてあって、カンボジア政府が国民に配布してくれたんだよ。」





政府配給Tシャツ・・・・。


響きが、超激レアっす
・・・・!!


トムさん・・・。

交渉成立っす!!











そして、サッカー野郎の僕にとってのシャツの交換は、友情の証。



なんだか、トムが他人だとは思えなくなってきました。
(100パーセント他人ですが・・・。)






と、いう事で、寝坊した上に、シャツの交換までしてたせいで、アンコールワットからの日の出を見ると言うイベントが忘却の遥か彼方に行っちゃってて、
「たおたん危機一髪」だったのですが、トムがバイクをぶっとばしてくれたおかげで、なんとかご来光を拝む事ができ、二日目のアンコールワット観光もとても楽しく周ることができました。



そして、二日目の晩、ジン君と宿の食堂でご飯を食べていると、トムの弟くんが話し掛けてきて、やっぱり、僕らの笑いの合言葉「スルーオアハーイ」で、笑いあっていました。


それからの弟くんを見ていると、レストランを手伝ったり、沢山の衣服の洗濯をしたり、とっても働き者です。



弟くんは、どうやらこの宿に住み込みで働いているようです。


すると、トムもやってきました。



「もうアンコールワットの主要な見所は、この2日間で、ほとんど見てまわったから、明日は僕の家でパーティしようよ。」


「トムの家??」


「うん、ここからバイクで1時間半ほど走った所にあるんだよ。」






トムにお金を貸してバイクを買ってあげたご両親。

ここから1時間半も離れた地図にも載っていない村。


そんな秘境に行ける機会なんて、そうそうありません。やっぱりジン君もノリノリです。




「いいね!是非連れて行ってよ。」




3日目の朝、僕とジン君とトムともう1人のバイタクの兄ちゃんと4人でバイクにまたがりトムの生まれ育った村へと向かいました。


その村にたどり着くまでの風景はまさに
「ザ・カンボジア」です。


高床式倉庫の様な家。


土の地面を裸足で歩く人々。


いつ地雷が爆発してもおかしくなさそうな野っぱら・・・・・・。





そんな道を1時間半ひた走り、辿り着きました。

トムの生まれ育った村。

当たり前ですが、オールカンボジア人です。外国人が人っ子1人いません。

僕はいままでこんな秘境に来た事がないので、もう大感動です。


トムの後に着いて歩いて行くと、トムは路上の露店で足を止めました。

この露店では、沢山の鶏が陳列されています。
トムは色々と物色したあと、店のおじさんにクメール語で話し、お金を払い、丸々一尾の鶏の足をがっちり持っています。


かなりワイルドなお買い物です。


次に酒屋さんらしきところに行って、ブラックパンサーという缶ビールを1ケース買いました。



僕らも半額払うと言ったのですが、トムは今日の日当ももらっていて、鶏とビールは両親へのプレゼントでもあるからいいと言って受け取りません。


ただ、あくまで僕らが払ったのはバイクのチャーター代。

さっきトムの払った代金は、物価の安いカンボジアでは結構な金額なので、僕らもただご馳走になるのは気が引けて、嫌なので、強引に手渡しました。



トムの実家に着くとお父さんが出迎えてくれました。お父さんが、鶏をさばいて焼いてきてくれるのだそうです。
トムはとてもうれしそうな顔になり、お父さんにさっきの鶏とビールを手渡しました。トムはきっとお父さんが大好きなのでしょう。


この3日間、トムの生活を見ているとなんだか、複雑な気がしてきました。


いっつもニコニコ笑って、仕事しているトム。

家族への思いやりを決して忘れないトム。

沢山の友達に囲まれているトム。


カンボジアという国は、あえて誤解を恐れずに言うと、とても貧しい国です。

でも、少なくとも僕が出会ってきたカンボジアの人たちの心は、日本人よりもはるかに満たされている様な気がします。


毎日、終電まであくせく働き、起きている子どもの顔を見れずに月日が流れていくライフスタイル。

人と人の関係が希薄になっていて、周りに迷惑を掛ける子どもすらしかれない日本。



それでも、お金もモノも溢れて豊かと言われる日本。




どちらが本当の豊かさなんだろう・・・・・。









トムの家はカンボジアでは裕福な方だと思います。

そもそもバイクも買ってもらっているし、住んでいる家に関しては周りの家々は、ただ木を組み立てたという感じの家ばかりなのに、トムの家は立派なコンクリート製です。



そして、僕らが通されたのは、屋根だけあって、まったく壁のない、かなり開放的なスペースです。まるで、学校の渡り廊下みたいな場所です。


すぐそばは庭で、たくさんの植物や木が覆い茂っています。


僕らは、コンクリートの地べたに座り込み、さっそく4人で乾杯をしました。


その時、僕らの周りに気配を感じたのです。

振り向くと庭に3,4人の子どもたちが立ったままこっちを物珍しそうにずっと見ています。


笑顔で手を振ると、みんなキャッキャキャッキャと騒いで笑っています。


そういってる間にお父さんが、焼いた鶏を皿の上にのせて持ってきてくれました。食べやすいように、一口サイズに切ってくれています。

さっそく素手でつかんで、噛み付きました。




おいし〜。




直火、新鮮、焼きたてと、三拍子揃った美味しいチキンがつまみとあっては、ビールがすすまないはずがありません。

このブラックパンサーというビールは僕のあまり好きじゃない黒ビールですが、美味しいチキンに楽しい仲間、気がついたら4、5本飲んでいました。



そして、僕らの後ろの庭には、いつのまにか子どもたちが10人以上も集まっていす。


トムいわく、おそらくあの子達には僕らが生まれて初めて見るガイジンなんだそうです。


僕は、子どもが大好きなのでこの子たちと遊びたくなって、立ち上がり子どもたちの方へ歩み寄ろうとすると、



「キャー!!!」


「キャー!!!」


「ウワヮアアア!!!!!」


「キャー!キャー!」



と、クモの子を散らした様に三々五々逃げて行ってしまいした。

僕は、あ然としてその光景を眺めていると、ガイジンから逃げ切ったと安心した子どもたちは木々に隠れてこっちを見ています。


全然帰ってきてくれる気配もないので、僕はあきらめて、またビールを飲んで騒いでいました。


すると、子どもたちがまたさっきの場所まで近づいてきました。

それならと、今度は、勢いよく立ち上がり





「わぁぁぁぁ!!!!」






と叫びながら、子どもたちの方へ走って驚かせてみました。

すると、予想通りさっきより大声を出して、みんな全力で逃げ去っていきました。



この時はまだ自分が酔っ払ってしまっている事に気づいていませんでした。


なぜなら僕は、そこそこお酒が飲める方で、缶ビールもまだ5,6本飲んだだけだと、タカくくっていたのです。

ところが、僕が飲んでいるこのブラックパンサー。アルコール度数が、日本のビールの2倍近い8%もあったのです。

つまり、日本のビールに換算すると、僕はすでに9本近く飲んでいることになるのです。



それを知らない僕は、気分がとってもゆかいになってきたので、みたび僕らの周りに帰って来た子どもたちに向かって走って追いかけていっちゃいました。



すると、子どもたちはさっきのように大声で逃げ惑っています。
今度は、そのゆかいな気持ちが手伝って、鬼ごっこ感覚でしばらく追いかけてみちゃいました。


すると、さっきまでの明るい雰囲気が一変、子どもたちは顔を引きつらせながら逃げ惑いました。


これは、いけないと思い、唯一知ってるクメール語にして、こんな時に最適な言葉。

みんなに向かって投げかけました。







「スルーオアハーイ!」
 (仲良くなる事は)めちゃめちゃかんたんだよー!







むなしいほどに効果なく、みんなは必死で逃げ惑い続けます。


そのうちの1人の女の子は大声で泣き出してしまい、自分の家まで走って逃げ込んで行きました。


とってもゆかいな気持ちの僕は、その女の子の家まで追いかけて行ってみました。


すると、その子はお母さんの後ろに隠れながら、こっちを見て、なおも大声で号泣しちゃってます。


お母さんや、周りのご家族は、この二人のゆかいなやりとりを見て、ケラケラ笑っています。


ただ、あまりにも泣きじゃくるので、僕も少し申し訳なくなってきて、





「スルーオアハーイ!」
(仲良くなる事は)とてもかんだんだよ






と優しく話しかけてみたのですが、それでもこの子は一向に笑ってくれる様子がありません。

仕方ないので、まだ笑い続けているご家族にむかって軽く会釈し、みんなのところに戻りました。


すると、トムは僕の悪ふざけにちょっと怒ってて、僕はおしりに一発キックをお見舞いされてしまいました。



僕は悪ふざけはしたものの、決して悪気はなかったのです。





そうこうしてる間に、日が暮れてきたので、シェムリアップの町に帰る事にとしました。

その時、どこからともなくトムの弟くんが現れました。

弟くんはニコニコしながら、


「たおたんは酔って危ないから三人乗りで帰ろう。」


と言ってくれました。


ただ弟くんはここまで、何に乗ってやって来きたのか・・・・。

現れてすぐに帰るなんて、一体何しにきたのか・・・・


よくわかりませんが、バイクにまたがった僕をトムとサンドイッチしてくれて、落ちないように1時間以上もぎゅっと捕まえててくれました。



その二人のあたたかい、あたたかいサンドイッチの中で僕は掛け替えの無い体験をさせてもらったと、トムに心から感謝しました。
















その晩


酔いがさめた僕はジンくんと、宿の食堂で晩ご飯を食べていました。

そして、さっきからずっとあの泣きじゃくっていた女の子の事が気になっていました。

初外国人が怖いといっても、あの泣き方は尋常じゃなかったのです。そこで、一つの疑惑が浮上してきました。初外人以上に恐ろしさを増す原因・・・。

一つだけ思い当たる節があります。

僕は食堂のレジにいる、10代のおねえちゃんに歩み寄って、尋ねました。





「ねぇ。ちょっと教えて〜。」



「ん?なに?」



「スルーオアハーイって、どういう意味なん・・・・?」



すると、おねちゃんは、右手を花のつぼみのように五本指を合わせるように握り、ゆっくりと自分の頭の上にのせました。



そして、勢いよく手をパーに広げこう言ったのです。







「あたま、ボーーーンッ!!!」










そう言うと、そばで洗濯している弟くんと二人して大笑いしました。













・・・・・・・・・・、








そりゃー・・・・・、



生まれて初めて見たガイジンが



あたま、ボーーーンッ!!



って言って、家の中まで追いかけてきたら、めちゃめちゃ恐ろしくてしかたないわ・・・・。



って、いうか・・・、


僕のおしり蹴ったけど・・・・


嘘を教えたトムも同罪やん・・・・・。




















              めちゃめちゃかんたん

                 終わり