巣立ち


空港まではの交通の手段として、僕ら貧乏バックパッカーが真っ先に挙げるのは、地下鉄・市バスです。

ユースからはたったの
2ドルで行く事が出来ます。空港の原則は2時間前到着なので、アメリカ最後の日に遅刻したくないという思いで、このユース主催の送迎バスを利用することにしました。

一人10ドルなので
五倍もの値段がするのですが、アメリカには、良い想い出だけを残して去りたい。そんな気持ちからでした。

空港までバスで一時間かかるとの事なので、それまでの間お姉さんと別れを惜しみながら、かうと三人で時間を潰していました。

兄さんはというと、昨日の二日酔いと疲労の為にまだ寝たままでした。起こしたら悪いと思って、昨日のパーティのお酒代の立て替えてもらってた
二人分の4ドルを、例の日記帳の中にそっと挟ませてもらいました

そして、ここで色々とお世話になった兄さんへの想い出がよぎます。あんなコミカルなサムライだったけど、いざ別れってなると何故か寂しさが込上げてきます。

そして、そんな思いにふけりながら部屋を出ようとすると、
兄さんが
パッと目を覚ましたらしく、ベットの上に起き上がりました。


「えっ!?も、もう行くの??水臭いじゃないかー!声も掛けないでー!」

僕らは、初めて兄さんに筋の通ったお叱りをもらいました。もしかしたら、一生会わないかもしれない今生の別れに声を掛けないという事は、さみしい話です。
小さな親切、大きなお世話!まさにこれだったんでしょう。


「すいません。起こしちゃうと悪いと思ったんで・・・。」


「あっ!そうだ昨日立て替えた2ドルづつ返してくれない!」



起きての第2声が、
・・・。


改めて、
起こさない方が良かったと思い直しました・・・。


そして、兄さんとお姉さんと僕らは送迎バスをフロントで待つ事にしました。

しばらく待っても送迎バスはまだ来る様子がありません。ここから空港までは1時間かかるので、バスは三時間前には来なければなりません。
僕らは心配になり
フロントの帽子をかぶったヒゲ面の兄ちゃんに尋ねると、プイっと向こうを向いたまま無愛想に

「今、来てる心配するな。」



と一言。
まぁ、そう言うならと思いながらも、時間は、5分、10分と確実に過ぎて行きます。

「まだ、来ないの?」

「渋滞しているんだ。心配するな。今、向かっている。」

と何を根拠にさっきから話しているのか分からないのですが、
30分が経ったのでさすがに「確認してくれ!」と言うと、ようやく電話し始めました。

帽子ヒゲ面は電話を切って、また無愛想にボソリと、

「バスは、渋滞で間に合わない!今からタクシーに乗ってくれ!」


あっさりと、今までの
全てをくつがえす真実を言い放ちました。

そして、隣に座ってた若い女性は、申し訳なさそうに空港までのタクシー代30ドルを金庫から取り出そうとすると、隣から帽子ヒゲ面が、その手をぐっと押さえ、僕らに

「お前達二人は、初めから10ドルづつ払おうとしていた。だから、ユースから10ドルだせば、合計30ドルだ。」


「おいおい、俺たちは、二時間前に確実に到着する為にわざわざ5倍の金を払って安心を買ったんだ。もう二時間前に着けないだろう?どうしてくれるんだ?」













「今すぐっ!タクシー捕まえたら着くんだっ!!」










あれっ・・・。逆ギレ・・・!?





全く納得が出来ない話ですが、すでにタイムリミットをかなりオーバーしています。これ以上抗議をして、もし10ドル獲得したとしても飛行機が行ってしまったら元も子もありません。

結局、僕らは泣き寝入りです。しかし、このままでは僕の怒りは収まりません。

そうだ!映画で見たあの
名捨てゼリフを吐くしかない!

そうして、僕は帽子ヒゲ面に
くるりと背を向け去り際に言ってやりました。



「ファッキュゥー・・・、ベリィーマッチ!!」




(か、かっこいいよー。たおたんー!相手の顔をまるで見てない。それは、まるで、ケンシロウの



「お前はもう・・死んでいる・・。」


みたいだよー!)

我ながらそんな自分にホレボレしてしまいました。

でも、
ノミの心臓の僕は後ろから殴りに来ないかと心配になり、後ろをチラ見してしまっていたので、ケンシロウというよりバットに近い感がありました・・・。

そして、急いでタクシーを拾い、空港へ向かったのですが、結局着いたのは
離陸1時間前と予定よりも1時間オーバーでした。
イエローキャブ(安いタクシー会社)が見つからなかったのでタクシー代も30ドルではなく、
40ドルもかかってしまったという完全な敗北でした。

帽子ヒゲ面は、知っていたのでしょう。二時間前に到着する事も出来ないし、30ドルでも行けない事を。

だから、

「お前はもう・・死んでいる・・。」

と思っていたのは、実は、帽子ヒゲ面の方だったのです・・・。

こうして、
良い思い出だけを残す為にと思って、高い金を出した送迎バスは、逆にアメリカでの良い思い出たちをポアしてくれました。

僕は、学校英語や、ハリウッド映画でアメリカの良いところばかりを、教えとして授かってきたのですが、今回のアメリカ一周旅行で、苦い思いも沢山体験する事が出来ました。

だから、今までの僕は
家族の説得もかたくなに拒否し続けてきたのですが、

帰りの飛行機で、太陽とシスコムーンの「マジック オブ ラブ」を何故か、
涙をこぼしながら聞き、


そして、決意しました。





 アメリカ真理教・・・・


    脱会・・・。









あめりか彰晃!!


ありがとう、そして、さようなら・・・。







≪特別企画≫

世界百選 謎の建造物・・・



世界には、いつ、誰が、何の為に作成した物か判らない不可解な物が沢山あります。

それらは、現在の科学の粋を尽くしても解明しえないのです。もしかすると、宇宙人へのメッセージだったかもしれませんし、その民族が、その民族たらしめる唯一無二の手段だったのかもしれません。

もちろん、僕にもそんな難しい事は判りませんが、その、一見無駄とも思われる建造物は、僕たちの胸に深いロマンへの憧憬と、果てしない夢を与えてくれ、それら自体が、僕たち一人一人にとって、それぞれの意味を持てば、良いのではないかと思います。



記念すべき第一号は、ニューオーリンズの街中で遭遇しました。






















投資額に、利便性全く追いつけていない歩道橋!!





(よく解る解説)

この交差点には
しっかりと信号がある上に、無意味に高過ぎるので、現地の人は
もちろん下を歩きます
上にいるのは我らがエンジェル「かう」だけです。そして、この歩道橋の左の道路は、
4車線あるのですが、そっちには歩道橋はありませんでした・・・。